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2026-03-11

Bitwig Studio 6 のファーストインプレッション

遂に来ましたねBitwig Studioのメジャーリリース。 約半年のベータ期間を経てやっとメジャーリリースされました。

ここでは私個人として影響が大きいと思ったポイントと、ファーストインプレッションをまとめていきます。

あくまでファーストインプレッションですので、詳細な説明や具体的な応用テクの紹介はあまりありませんのでご承知おきを。 紹介していない追加機能もあります。

ベータ版について

Bitwig Studio 6は半年前ほどよりベータ版が存在し、アップグレードプラン有効期間であれば公式サイトから試すことができました。

細かいバグ修正が重なり、最終バージョンはBeta 17でした。

私は触り始めたのがかなり遅く、最初に触ったベータがBeta 13程度でした。 ただ、たまに触るくらいでまともに使ったことはありませんでした。 だからあまり知見がたまっていない

進化点

Bitwig公式の表題は"On Another Level"、より使いやすい、一次元上のエディターを目指したとのことです。

私目線では、誰にとっても無難に嬉しい堅実な改善と、応用が効きまくるであろう大きな仕様変更の2大トピックと思います。

かつての GridMSEG といった、パット見ですごい!面白そう!とワクワクするような新機能はなく、追加されたエイリアスオートメーションのクリップ化もスゴそうだけど複雑そうな代物。 5.3からエディターの不満解消に重きをおいた堅実なアプデかな…?と思っていたのですが、実際使ってみるとただの便利化にとどまらず、仕様の拡大で制作のアプローチを広げる、Bitwigらしいアップデートでした。

なお、本家Bitwigの説明の見出し通りには説明していないのでご注意を。

UI

まずUIがガッツリ変わっています。

今風のエディターっぽくなりました。 個々のUIパーツが洗練され、前よりスッキリした印象があります。 一方で大まかなUIパーツの配置はほとんど変わっていないため、5から上げてもすぐ慣れます。 色以外は…

色は黒~グレー基調になり、概ね標準的なダークテーマになりました。

個人的には、最近のプログラミング向けのテキストエディタのデフォルトテーマに似ていると思います。

この色が嫌いという人はあまりいないと思いますが、以前のバージョンのカラーテーマが好きだった人には残念なお知らせがありまして…

テーマの変更機能はないので、5以前に似たテーマに戻すことはできません。 新しいものを受け入れるしかありません。

中間色やグレーの度合いは変更できますが、白方向に振り切っても少々明るめのグレーにしかなりません。

個人的にはバージョン5以前のテーマはかなり気に入っていたので、モダンなUIになって喜ばしい反面、少々残念な気持ちもあります。 せめてアレンジャービューとピアノロールを白背景にできるオプションがあれば嬉しいです。

今のところは各種設定を白方向に振り切った設定で頑張って慣れてみようと思います。

Note

一応、内部ファイルをいじることで色を自由に変更できるようですが、ここでは触れません。

テンポ変化が上に移動した

テンポ(BPM)のオートメーションが上部に移動しました。

今までテンポは一番下に固定表示されている Master トラックのオートメーションとして調整する仕様で若干分かりづらかったのですが、今回より最上部のヘッダに組み込まれており、わかりやすくなりました。

キューマーカーの表示

Tempoが上に来た。また表示幅も調整できるようになっており編集のしやすさが向上した

また、以前私がバージョン5の振り返りで要望で出していたレンジの調整がテンポに限り実装されています。 上の画像で 110 ~ 189 になっている箇所の上限・下限値を調整できるようになっています。 設定されているBPMが表示幅に入る必要はありますが、以前に比べてかなり見やすくなりました。ソフランいっぱいの曲が書きやすくなったね

オートメーションのHOLD点の追加

オートメーションの各点にHOLDというオプションが追加されました。 これをONにするとオートメーションの値を維持(hold)する挙動になります。

個人的にはこの仕様追加が買いポイントでした。 これの恩恵を強く感じるのであれば、これだけでもアプデの価値はあると思います。

Offの場合は従来通り、次の点まで間をなめらかに補間します。 点ごとに決められるので、混在させることも可能です。

HOLD点の追加

HOLDタイプのオートメーション。瞬間で切り替わるBPM変化が書きやすくなった

音ゲーにおけるBPM変化(ソフラン)は基本的にHOLDの仕様で、ある瞬間にいきなりBPMが変わります。

以前のバージョンでこれを行うには同じ時刻に2つ点を打つ必要があり大変手間だったのですが、この機能のおかげで非常に楽になりました。ソフランいっぱいの曲が書きやすくなったね

キーシグネチャー機能

要はルートのキーとスケールをグローバルに決められるようになりました。 グローバルにスケールを定め、音程をスナップさせることができます。 また、音程にスナップさせなくとも曲のキーの確認用途にも使えるかもしれません。

キーシグネチャー

ルートの音とスケール名。これもグローバルオートメーションになっている

搭載しているスケールの種類が意外に多いので、適当に変えてみたり、普段あまり使わないスケールを作ってみるなどの活用もできそうです。

また、グローバルで使えるのでライブパフォーマンスにも相性が良いと思います。 グローバルのシグネチャを変えることで一気に複数のトラックを転調するような使い方ができそうです。

この機能を聞いた時、今のBitwigに必要なのかと疑問に思うこともありましたが、スケールの変更も意外性を取り入れる一つのアプローチだと捉えると、この段階で搭載したのはBitwigらしい選択と言えるかもしれません。


加えて、ピアノロール上でピッチをスケール音にスナップ(クオンタイズ)したり、スケール音を強調表示できるようになりました。 他の一部のDAWにもある機能ですが、Bitwigにも入った形です。

スナップを有効にすると、下の画像のようにスケールノートに薄い青線が引かれ、矢印キーでピッチを変えた際にスケールノートのみを辿るようになります。

音楽理論が頭に入っていれば不要な機能…と思いがちですが、そんなことはないです。 スケールが定まっているのであれば、音程変更で矢印キーを押す回数を減らせます。 操作を減らせる点でなんだかんだ便利です。

もちろん、慣れていないスケールでコードやメロディを構築する際にも十分使えるので、活用の機会は多いです。 あるに越したことはない機能ですs。

また、UIパーツが最小限で邪魔にならないので、使わない際に全く邪魔にならない点は良いです。 スケールガイドを一切使用せず、12音を使って自由に構築できることも大事ですし。

ちなみに、ノートを選択し、選択したノートだけスケールにスナップすることも可能です。こちらも汎用的で便利そうです。

Tip

動的なピッチスナップにおいては、今まではKey FilterというNoteデバイスでピッチをスケールに合わせていましたが、これがしれっとNote Filter+に進化し、グローバルのスケール設定に従わせることができるようになっています。

キーシグネチャー

Cミクソリディアンスケールにスナップした例。最初にCメジャーコードを作り、複製→矢印キー上下で簡単にダイアトニックコードを作れる

ノートバックグラウンドというオプションを使うとスケール音の強調表示も可能です。 若干仰々しいですが、スケールから外れている音をパッと確認したいときに便利かもしれません。 ちなみに6.0(.0)現在、「ノートバックグランド」になっており若干誤字っています。

ちなみに、この強調表示とピッチのスナップは独立しているので、強調表示はするがスナップはしないようにもできます。

私は控えめな表示のほうが好みなので、強調表示は使わないと思います。

スケール音の強調表示

ノートバックグラウンドというオプションを設定した場合。若干見た目がうるさいが使い時はありそう…?

些細だけどイケてる点

キューマーカーの表示が変わった

今までは右三角マーク()が振られるだけでしたが、今回から次のキューマーカーまでの間に色が付くようになりました。

これだけとはいえ印象がかなり変わり、セクションを意味するモノという印象が強まったように感じます。

私は今までもセクション区切りの目印として使っていたので、見やすくなったなぁと思います。

もちろん、今まで通り再生開始の目印としても使えます。

キューマーカーの表示

「Aメロ」などがキューマーカー。次のキューマーカーまで色が付き、セクション区切りの意味合いが増した。色を付けても分かりやすい

ミニマップが追加された

今までシークバーがあったMasterトラックの下の空間に、全体がなんとなく見渡せるミニマップが表示されるようになりました。 シークバーの機能はそのまま残っており、今まで通りここをドラッグしてシークすることもできます。

キューマーカーがあると名前が大きく表示されるので、やはりアイツ(キューマーカー)はセクションとして使う想定なんでしょうかね。

ミニマップ

セクションの確認がしやすくなった

MIDIステップ入力

他のDAWでは当たり前のステップ入力ですが、今更ながら実装されました。 やはりあると楽ですね。

まだ良く使えていない機能

クリップエイリアス

クリップのエイリアスを自由に生成・配置できるようになりました。

エイリアスとある別の「クリップの実体」を参照するクリップです。

エイリアスはプログラミングやLinuxの操作経験があると馴染み深い概念のですが、そうでもないとなかなか馴染めない概念ではあると思います。


ここで少し、エイリアスの説明をしたいと思います。

エイリアスとは簡単に言えば「何か別のものを参照するモノ」です。

さて、エイリアス自体は真新しい機能ではあるんですが、実は今までもエイリアスに似たものはありました。 それはクリップのループです。

クリップの右端をドラッグするとループを作れますが、ここで

  • 1つ目→「本物」(より正確には「実体」)
  • 2ループ以降→本物を参照しているモノ

であり、1つ目の「本物」を変更すると、ループしてる側の方も勝手に同じように変更されました。 つまり、2ループ以降は1つ目を「参照」しているものなので、エイリアスです。

このような「別のものを参照するモノ」という概念がミソです。 改めて、

  • エイリアス = 何か別のものを参照するモノ

です。

その他、PCにおいても、

  • ファイル=実体
  • ファイルへのショートカット=エイリアス

としてよく見られる概念です。

Bitwig 5までは全てのクリップが「実体」でしたが、今回はエイリアスの概念を追加し、自由に他の実体を参照できるようになった、というのがこのアップデートの本質です。


実用的には参照先を固定して編集作業を効率化する使い方と、積極的に参照先を変える使い方の2通りがあると思います。

前者は、たとえばAメロが2回存在し、そのドラムパターンをどちらもまったく同じにしたい、という場合に便利です。一回目のほうを実体、二回目の方をエイリアスにすることで、一度の変更でどちらも変更することができます。 これくらいならコピペでもできますが、編集箇所が多くなってくるとエイリアスが役立ちそうです。コピペ忘れ防止にもなります。

後者は前者とは逆の発想で、候補をパッと切り替えて合うものを探す使い方ができます。 ドラムパターンをあれこれ試す際に役立ちそうです。 クリップランチャーでも似たような試行錯誤ができますが、あちらと異なり、小節の頭に限らず、どのタイミングでも参照可能です。

Note

参照できる実体は同じトラック・同じタイプ(オーディオまたはMIDI)で、どこかに存在しているものに限るので、削除されたクリップや、プロジェクト内にも存在しないクリップを参照することはできません。

つまり、まだ使うかどうかわからない素材をエイリアスで参照させるような場合、事前にその素材をどこかに配置しておく必要があります。

クリップランチャーを使っていないのであれば、クリップランチャーを素材置き場とみなして使うのもアリです。 アレンジャー側ではそれらをエイリアスで参照するなど。逆も可能です。

…というなかなか奥が深い仕様を実装してくれており、間違いなくバージョン6の目玉機能ではあるのですが、実のところ、私はまだ使えていません…

この機能は以前のバージョンで作ったプロジェクトより、これから作るプロジェクトで活躍する機能だと思います。

とはいえ、明確に使いどきがあるのですぐ活用すると思います。

後で、便利な使い方を見つけて別途記事にしたいと思います。

オートメーションクリップ

オートメーションレーンがそれぞれクリップを持てるようになった、というものです。

こちらも紛れもなくバージョン6の目玉機能ではあるんですが、正直まだ使っていません。 仕様の奥深さを感じていはいますが…。

こちらも前節同様、旧バージョンで作成したプロジェクトで活用するより、これから新規で作成するプロジェクトで活躍するものだと考えています。

出来ることはなかなか多いです。

  • オートメーション変化を別途ライブラリに保存できるようになった
  • 部分的にクリップ化して名前を付けられるようになった
  • オートメーションをループできるようになった(!!)
  • ライブラリからオートメーションの素材を色々(!!)

特にループできるようになったのは何気にデカいです。 今まで繰り返しは範囲選択→複製(Ctrl+D)で一つ一つコピーするか、LFO, MSEGで制御する、という方法を取っていましたが、クリップ化できるようになったことでより簡単にループできるようになりました。

ちなみに先述のテンポやキーシグネチャーもオートメーションの一種ですので、同じようにクリップ化できます。

また、プリセットのオートメーションクリップがたくさんあります。 ブラウザから全てカーブ にあります。サンプル・クリップでは検索されません。

オートメーションカーブの素材を貼り付けて、それらを組み合わせたりイジるような音作りができるようになりました。

もちろん先述のエイリアスにも対応しているので、ぱっと候補を切り替えたり、複数箇所の同時編集も可能です。

Note

オートメーションレーンの仕様が全く変わってしまったわけではなく、オートメーションにクリップを「配置できるようになった」というだけです。 そのため、クリップを使わなければ従来通りの使い方ができます

直っていないこと

  • Windows, Linux上の横方向スクロールは相変わらず Alt+マウススクロールです。仕様なんでしょうか。だとしたら、デファクトスタンダードのShiftにしない理由があるんでしょうか…。

  • 相変わらず韓国のグリフが優先されます。以前紹介した方法で直せますが、アップデートの度に手動で直さなければならないのは少々面倒です。

謎の仕様変更

グループトラックのクリップレーンが消えた

今までのバージョンでは、グループトラックのオートメーションを開くと小さい専用レーンがあり、ここを使って自由にオーディオクリップを配置できました。

グループトラックにオーディオクリップを置くと、フォルダ内の出力が無視され、オーディオクリップのみが再生されるという仕様がありました。 バウンスインプレイスと組み合わせると疑似的にトラックフリーズが可能な便利な機能です。

一方で、バージョン6ではこの小さいレーンが消滅しました。 グループトラックのレーンの概念自体は存在しているのですが、専用のレーン表示がなくなったことで、フォルダに表示されているクリップがグループトラックのモノなのか、グループの中身なのかがパッと見わかりずらくなりました

Tip

設定でヘッダーの大きさを Large にしていれば若干見出しの大きさに違いが生まれるので、違いがないわけではありません。 とはいえあまりにもわかりずらいので、現実的な解決策としてはグループ自体に、その中身と被らない色を付けるのが一番です。 下の画像ではグループ自体に緑色をつけています。1小節目はAudio 1のクリップ、2小節目にあるのがグループトラックのクリップです。

グループトラックのクリップ

バージョン5まではグループトラックに小さい専用レーンがあった。グループ親側のクリップの存在確認が容易で、個人的には好きな仕様だった

グループトラックのクリップ(6)

6では専用レーンがなくなった。グループトラック側のクリップか、フォルダの中身が1個表示されているのか、違いがパッと見わからない。

負の世界がなくなった

バージョン5までは、アレンジャーの1小節目の頭に拍子変更を挿入し、その拍子変更を右にD&Dで移動すると、左から負の小節が現れるという謎のバグ仕様がありました。

バージョン6ではさすがに直っていました。

負の世界

Bitwig 5で見れた負の世界。さようなら

買いかどうか

これは主に現在アップグレードプランを切らしており、アップデートするか悩んでいる人向けです。

今回は悩ましいです。

あくまで個人の意見ですが、

更新するか否かの判断基準

  • 今のバージョンで困っていることがない → 次のバージョンアップやセールやまで導入を見送ってもよい
  • エディターの改善が自分の作業効率にに大きく影響しそうだ or 新機能でやってみたいことがある → 更新。ただし円安で高額なのでセールを待っても良い

で判断すると良いと思います。

今回のバージョンアップの中ですぐに役立つ要素はエディターの改善です。 一方でエイリアスやオートメーションクリップはこれから応用方法を模索する代物であり、現時点であれこれやってみたいというイメージが湧いていない限り、導入してもすぐに役立つとは言い難いです。

したがって、現段階ではエディターの改善点が良いなと思ったり、エイリアスやオートメーションクリップであれこれ試したいことがあるのであれば、更新すれば幸せになれると思います。 一方で、Bitwig 5以前で特に困っていることがなければ、見送ってもよいと思います。

なお、先述の通り金額が高いので、更新するにしても急ぎでなければセールを待っても良いと思います。 ここ数年は円安が続き、2026年3月11日現在の為替レートですとアップグレードプランの更新は $169 、1ドル158円なので26,747円と、日本円で見るとかなり高額です。

特に5.3→6の更新では金額の割に更新点が少ないので悩ましいです。 この金額を払うなら何か新しいデバイスやサンプルパックがガッツリ追加されてほしいのが正直なところ。

私は使い方の模索のためにもこれからは6を使いますが、現状では5.3で作れと言われても全然不満なく作れます。

まとめ

最初はただエディターに他DAWのような機能を追加した堅実なアップデートだけだと思っていたのですが、それだけにとどまらない奥深い仕様拡張がありました。

エイリアスやオートメーションクリップは一見地味ながら奥深い仕様拡張で、これから便利な使い方が模索されるものと思います。 私も何か良いTipsが見つかったら記事にする予定です。