Bitwig Studio 6.1メジャーリリース! 待望のSampler大幅刷新
2026-09-06

Bitwig Studio 6.1がリリースされ、遂にあの Sampler が大幅に刷新されました。
このブログはあくまで個人ブログですが、Bitwigだけは毎回インプレッションも含めて記事にしていきたいと思っています。
ですので、ここでは新機能を簡単にまとめつつ、私個人として面白そうと感じたポイントも併せてご紹介します。
Bitwig Studio 6.1の新機能
一言で言えばSamplerの大幅刷新です。
サンプルのスライシングに対応したほか、グラニュラー再生ができるようになりました。 便利化だけでなく、サウンドデザインの幅が広がったのがグッドポイント。
以前同様、今回の大幅強化が入ったSamplerはGrid内でも使えます。 特にグラニュラーをGridのあれこれで制御してみると面白そうです。
Samplerの改善要望はBitwigのフォーラムで度々言われていた覚えがあるので、今回のアプデは嬉しい方が多そうですね。
個人的にも、サウンドデザインの幅が広がるので大歓迎です。

新しくなったSampler。色々オプションが増えている
正式なリリースノート全文はBitwig公式のこちらから。
余談ですが、それなりにBitwigを使っている身としてはSampler+として別デバイスにするのではなく、既存のSamplerを直接改修したところがエラいな~と思っています。
スライシング機能
スライシングに対応しました。 前バージョンでもGridやマクロを駆使することで擬似的にスライスを実現できましたが、今回のアプデにより基本機能となり非常に使いやすくなりました。
右上の SingleとSlicedのうち、Slicedを選ぶとスライシングモードになります。

分割方法は等間隔・拍単位・オンセット検出・ピッチ変化による自動検出など複数の分割方法が選べます。 もちろん自分で後から修正可能です。

スライス方法のオプション一覧。
分割後も個別に手動調整が可能です。 スライスごとにループやモジュレーションを設定でき、複雑なバウンス系のテクスチャやグラニュラー的なレイヤーを作れるようになったとのことです。
個人的にはオンセットモードが特にありがたいです。 リズムが一定でないピアノのコード伴奏なども簡単にトリガーできます。
ブレイクビーツも、Hitech系の切り貼りのウワモノもはかどりそうです。

オンセット検出。リズムが一定でないサンプルでもいい感じに対応可能。検知精度も良い感じ
プレイモード機能
スライスの下にある項目です。
なお、SpectralとFragmentsの2モードはフル版限定です。
Repitch~Fragmentsの箇所。今回の目玉だが、それぞれの挙動を把握しておく必要はある
どのモードを選んだかによって、その右下側、上の画像ですと Clean がある部分の項目が変化します。
Note
ちなみに項目名についている [?] みたいな文字化けは、おそらくBitwig側の小さいバグです。
Unicode関係の何かだと思います。過去のバージョンでも色々なところで出ていました。
既存モード(Repitch / Cycle)
Repitch および Cycle は6.0以前から存在していた仕様です。
挙動は同じですが、こちらにも追加機能が入っています。
Repitchモードにはアナログ機材の質感を再現する Analog, Digital という新しいキャラクターが追加されました。
上の画像で Clean となっている部分から変えられます。
Analog では Crunch, Tape という2つのノブが出現します。
CrunchはおそらくTube系の歪みです。Tapeは名前の通りテープサチュレータ系です。
使い所としては、テープサチュレーションをかけて90's風の質感にするとか…? パッと音の質感を変えたいときは重宝しそうです。
Note
F1キーのヘルプは、6.1(.0)現在、Tapeの説明のタイトルが誤ってRepitch Colorとなっています。詳細説明の部分はTapeです。まぁ、マイナーパッチで直るかと。
Cycleもオプションが追加されました。
元々も挙動を理解しないとよくわからないモードだったのですが、色々機能が追加されており、なおさら理解が必要になってます。 簡単になったというより、より音作りを追い込めるようになった、という感じです。
後述するグラニュラーとは独特なテクスチャーを得られる点では共通しています。
右下のオプションは Pulse, Partials, Phase の3モードを切り替えられます。
ざっくり言うと変調方式の違いです。
あと、2つのCyclesエンジンをクロスフェードする機能も追加されています。 これをONにするとかなり音が変わるので、どちらかを選んだ後から調整を進める形になりそう。
個人的にはボーカルサンプルを加工する時は面白そうです。
Cycleの設定。Formantは3モードとも共通で、右側ノブはモードごとに異なる。
Spectral
Serum 2などにより割とポピュラーになってきたスペクトラル処理です。
加えて、オンセットの保持具合を調整できたり、特定のキーに倍音を吸い付けたりできます。
選べるオプションは Pure, Reharm の2種類。
Pureはフォルマントシフトができ、Reharmは倍音を変えられます。
特筆すべきはReharmで、特に倍音のクオンタイズをKeyに設定することで、サンプルに和音感を無理やり与えることができます。
倍音成分が特定のキーに吸い寄せられることで、コード感が後から足されたようなサウンドになります。
私が試した印象ではColour Bassのようなテクスチャーが付くので、そちら方面のベースサウンドを作るのに使えそうです。ボコーダーを使うより簡単かも。 あるいは、コード感がない素材、たとえばドラムなどに使ってみるのも面白そうです。
Reharmでクオンタイズをピッチに、%を100%にすることでサンプルにコード感を後付けする荒技。Colour Bass風のサウンドが簡単に作れる
Note
なお、Spectralはインスペクタ側でしか調整できない項目もあります。
Quality/Costはデフォルトで中になっていますが、高にするとよりなめらかになります。聴いてわかる程度には音に影響します。
また、吸着させるキー・スケールもここでしか設定できません。
Spectralモードではインスペクタ側でしか設定できない項目も多々。
Fragments
新機能の1つで、いわゆるグラニュラー再生です。
後述するTexturesモードよりも設定できる項目が多く、複雑ですがその分幅広いサウンドデザインができます。
グラニュラー再生は、対象のサンプルを、fragment, grain などと呼ばれる非常に短い断片に大量に切り出して、それを敷き詰めるようにして再生しなおす再生方法です。
再生方式の概念としては上の通りです。 実用上は
- 素材のテンポやキーを音質劣化を抑えつつ変更する
- ※グラニュラー特有の質感は出るけど、比較的マシなので。
- グラニュラー特有の、独特の質感を得る
- その他、実験的なサウンドアプローチ
ために使われる事が多いとのことです。
積極的な音作りの視点では、何というか独特なジャリジャリした質感が大きな特徴です。 これを積極的に利用することで、グリッチ系のサウンドメイクのアプローチの1つとして有用です。 また、サンプルからパッドを自作する際の手段としても有用です。 Cubaseに入ってたPadShopはこの方式ですね。
グラニュラーはまだあまり開拓が進んでいない(と思っている)ので、まだ何か新しいサウンドを作れそうな気がします。
こちらもSpectral同様、インスペクタ側の設定も重要です。
特にDirectionの設定はグラニュラーの挙動を大きく変えるため、こちらは把握必須です。
Fragmentモードもインスペクタ側でしか設定できない項目あり。挙動に大きく影響する
筆者の現段階の個人的なインプレッションとしては、やはりグリッチ系のサウンドメイクの一種として開拓しがいがあるなぁという印象です。
特にこのSamplerにおいては、Fragments側の設定項目であるグレイン幅, Density, Motionに加え、Sampler全体のPitch, Speedも含めて、これらをモジュレーションで動的にいじると面白そうだなぁと思ってます。
モジュレーションすることで「独特なテクスチャが付いたオリジナル素材」と「よくわからないグリッチサウンド」の間をモーフィングできるので、筆者の中ではこれがグラニュラーの大きな個性になりそうです。
…とは言語化してみたものの、パッとかっこいい音作ってみてよ、と言われるとなかなか難しいです。 まだまだ試行錯誤が必要だと実感します…。
Textures
こちらもグラニュラー再生ですが、Fragmentsと比べて設定できるオプションが少なくなっています。
調整できるのはグレインの大きさとMotionだけです。 シンプルな分、こちらのほうが扱いやすい場面がある…のかもしれません。
説明では 「モーション付きのピッチ追従グラニュラー再生」とあります。 「ピッチ追従」がFragmentsとの差別化でしょうか。
グレインサイズが大きめの時は、Motionはランダムなディレイのような感じになり、小さめのときはコーラスのような質感からホワイトノイズのような質感まで変わります。
こちらもこちらで試行錯誤が必要そうです。 何か新しいサウンドメイクに使えそうな見込みはあるのですが、まだパッと使えるような型は思いついていません…。
動的ピッチ解析
ピッチの指定部分で動的ピッチ解析モードが追加され、サンプル全体が演奏する音に動的に追従させられるようになりました。
つまり、ド→ミ→ソ みたいな単音弾きのサンプルがあったときに、このモードでCの鍵盤を弾くとド→ド→ドのように再生されます。
下の画像の ROOT と書いてある部分のすぐ左に、丸で囲った波のマークがあります。ここをクリックすると動的モード、従来モードを切り替え可能です。
コレだけでも何か役立ちそうですが、SpectralやFragmentsと併用するとさらに音作りの幅が広がりそうです。
Note
ちなみに、スライシング使用時はこの機能は使えないようです。 スライスと併用できたらより面白そうでしたが…求めすぎでしょうかね。

ROOT Dynamicとなっていれば動的ピッチモード。動的ピッチ解析モードではどの部分も演奏したピッチで再生される
そのほかの改善
他にもSampler内で細かい改善があるようです。 一応以下にまとめてみました。
- フィルタ部分にBellタイプが追加された。
- プレイヘッド表示が改善された。
(個人的にはよくわからない) - オンセットへのスナップができるようになった。
- 波形表示部分の右上のアイコンから
オンセットに吸着が選べます。
- 波形表示部分の右上のアイコンから
- リリース時のループ挙動を選べるようになった
- 波形表示部分の下側あたりの
LOOPの設定にAT NOTE OFFという項目から挙動を選べます。
- 波形表示部分の下側あたりの
- ループ範囲を長さを変えずにドラッグする機能が追加された。
- 多分
Alt/optionを押している間の挙動のことです。ループ幅を維持したまま範囲を並行移動できるようになっています。
- 多分
- マルチサンプル機能の改善
- 複数サンプルのドラッグで即座にラウンドロビン生成、修飾キーでのレイヤー化、ゾーンのミュート/ソロ、ヒストグラムでの一括編集、
Live "Select" Updatingにおけるクロスフェード、等…
- 複数サンプルのドラッグで即座にラウンドロビン生成、修飾キーでのレイヤー化、ゾーンのミュート/ソロ、ヒストグラムでの一括編集、
Tuner
Tunerデバイスが追加されました。 もちろんGrid内でも使えます。
見た目はギターのチューナーのそれです。

Tunerデバイス。ギターのチューナー風。履歴機能も面白い
実際、ギターのチューニングにも十分使用可能でした。 IFのバッファ等の設定によりますが、反応が速く、centも表示されるので使い勝手はまあまあ良いと感じました。 ギターをIFに直挿ししてプラグインのアンプシミュレータを使うスタイルの方でも十分使える水準だと思います。
ウィンドウ下側の履歴はけっこう面白いです。 ギターの弦を弾いたときのピッチの揺れを観測したり、何かと面白い機能だと思います。
まとめ
遂にSamplerに大改修が入り多機能なデバイスになりました。
スライシングなどの便利機能により使い勝手が良くなった他、グラニュラーモードによって音作りの幅が広がったりと、これからも活躍していけそうです。
複雑になったぶん色々覚えることも増えましたが、DAW標準のサンプラーとして十分すぎる仕上がりになっていると思います。
余談として、色々と要望が絶えなかったSamplerが大幅改修された一方で、次のバージョンアップで何が来るのか気になります。 6.2、あるいは7.0になるのか。 その時は一体何が改善されるのか…。 楽しみにしながら、しばらくは6.1を使い倒してみようと思います。