機材紹介 ギターアンプ編 その1 〜 Hughes and Kettner TubeMeister Deluxe 40
2026-08-30

新しく機材紹介を始めてみました。
音楽機材を使ってみた感想を見聞きするのが以前から好きで、私もいつかやってみたいと思っていました。
今はAI時代真っ只中。 情報を集めて中立的に整理するなら、AIを使う方が圧倒的に効率が良いです。 何なら出力も読みやすいし。
そんな中でも、ただ何の役に立つかわからないような、所有物に対する個人的な意見や感想をダラダラ見たり聞いたりする…そんな機会があってもいいんじゃないかなって思ってます。
さて、今回は第一回として私が愛用するギターアンプヘッド、Hughes and Kettner の TubeMeister Deluxe 40 のご紹介です。
ちなみに、上位機種であるGrandMeister Deluxe 40 にもある程度通用する話になるので、あちらが気になる or お持ちの方にも見ていただきたいです。
また、音楽機材ですし、いつか動画としてもお出ししたいと思います。 まだ少し時間がかかりそうですが、やる気があるうちに仕上げ切りたいところです。
ひとまずはブログ記事としてお楽しみいただければと思います。
TubeMeister Deluxe 40とは
TubeMeister Deluxe 40は Hughes and Kettner がかつて生産していた真空管アンプヘッドの一つです。

TubeMeister Deluxe 40本体。 実用性もさることながら見た目も格好良い
ただ、残念ながら、2026年8月(記事執筆時)は事実上の 生産完了 であり、TubeMeisterおよび上位機種のGrandMeisterシリーズは中古以外に入手する手段がありません。
ただ、実用面もサウンド面も、2026年現在でも十分価値があるアンプヘッドだと思っています。
Note
より正確にはTubeMeisterシリーズの全モデルが「取扱終了かつメーカーのカタログから外れている」という状態です。 特に「生産完了(終了)しました」という声明があるわけではありませんが、メーカーの製品ページで取扱終了になっているし、実際新品が生産されていないので、事実上生産完了しているという状態です。
真空管の構成
真空管はプリ管に12AX7(ECC83)×3、パワー管にEL84×4を搭載しています。
12AX7は言わずもがなプリ管の大定番です。
EL84は20W~40W級のアンプでよく使われています。 50W以上だとEL34や6L6が主流なので、W数である程度棲み分けられてます。
EL84を使うアンプはそこそこ存在しますが、ハイゲイン系で、100W級のフラッグシップアンプの小型版ではなく、独自に開発されたアンプで絞り込むと実は多くありません。
GrandMeister, TubeMeisterはTriAmpの縮小版ではなく別物と思ったほうがよいです。 回路は「TriAmpからインスパイアされた」らしいですけど。
MESAのMini RectifierやMark Mini、FRIEDMANのPink Tacoもミニヘッドでは有名ですが、あちらは大出力のオリジナルが存在しますし。もちろん、いいアンプだと思いますよ。
他メーカーですとENGL Ironball、Orange Tiny Terrorなどがあります。
余談ですが、オリジナルがEL34だったのにEL84になっちゃったのは残念…とは考えないほうがいいです。 真空管の違いはあれど、それを折り込んだ上で設計されているはずです。 製品自体の使い勝手や音が良いことにのみフォーカスし、そのアンプへの理解を深める方が、そのアンプを120%使いこなせて、結果的に音も良くなると思います。
ちなみに、ハイゲインでなければVOX AC30は有名ですね。 しかもあれはあれでEL84関係なく特殊なアンプだと思います。いつかレビューしたい。
イケてる点(音以外)
PCキーボードの紹介のときにも「イケてる点」を紹介してたので、機材紹介でも「イケてる点」、というか機材紹介の文脈では私が個人的に好きな点として紹介していきたいと思います。
まずは 音に関係ないところをご紹介。
Note
製品の良し悪しを中立的にまとめるというよりは、私がこの製品の何を気に入っていて、実際にどんな時にこの機材を使いたいと思うか…そういう意見が、誰かの音作りや音楽活動の参考になればなと思っています。
ルックスが良い
まず筐体がカッコイイです。

青く光るアクリルパネルと、そこから見えるトランスと真空管。小さくてもインパクトは抜群
後で音の話もしますが、まずは見た目。 青く光るアクリルパネル越しに映る真空管。 この見た目は今なお魅力的です。
青く光るパネルは、小型ながらステージでも映えます。 ライブハウスのステージでアンプそのものがスポットを浴びることはあまりないので、自ら光るこのアンプは尚更目立ちます。
ステージじゃなくても、演奏動画の背景に置けばアクセントにもなっていい感じです。
パワーを入れる度に気分が上がるのもナイス。
パット見のルックスもちろんのこと、フロントパネルに出ている操作系で使わないものが一切ない機能美も良いです。 必要なものだけがフロントに出ています。 一切の無駄がないこのシンプルなUIは、GrandMeisterにはない魅力です。
Tip
ちなみに、このアンプの電源が入っている状態をカッコ良く写真に収める場合、露出を少し下げたり、ナイトモードを使うといい感じに撮れます。
スマホのカメラアプリのデフォルト設定でパッと撮ると、アクリルパネル全体が明るく写りがちで、実物を見たときより印象がぼやけることが多いです。
持ち運びやすい
40W級の真空管アンプの中ではかなりコンパクトです。 重さも真空管アンプの中では重すぎない程度で、専用バッグで片手で十分持っていけます。 持ち運びが容易なのはアンプヘッド持ち込み派には嬉しいポイント。
Marshall JCM系やTriAmpなどの4x12キャビにピッタリ合うデカいアンプヘッドと比べるとかなり小さいです。 4x12キャビに乗せるとチョコンと載るのでかわいらしくなりますが、まぁ、愛嬌かな…。
Note
ちなみに奥行きもコンパクトなので、上にアッテネーターを置くなどは基本的にできません。 かなり熱を持つ点も含め、上に何か置くのはやめたほうがよいです。
真空管の交換が簡単
真空管の交換がかなり簡単です。 筐体左右のパネルをプラスドライバーで外すだけで、すぐに真空管にアクセスできます。 真空管のリプレイスが捗ります。 さすがTubeMeisterを名乗るだけのことはあります。
ちなみに、私の個体はプリ管のV1がTung-sol, V2,V3がJJに交換されています。 こういうモディファイはもちろん、寿命が来た真空管の交換が簡単なのももちろん嬉しいポイント。
…とはいえ、音の傾向はオリジナルとあまり変わりませんでした。 音を変えるモディファイよりも、壊れた時の交換がラクになる方のメリットの方が大きそうです。

V2,V3はJJ。V1はカバーで見えないがTung-sol。簡単に交換できる上、カスタムの様子が外から分かるのもケトナーならでは。
価格が安めだった
今は生産完了してしまったのでなんとも言えませんが、十分実用的な基本スペックとケトナーらしい音と機能性を持ちながら、新品価格が割と手に取りやすい金額でした。 特にTubeMeisterはGrandmeisterという直属の上位機種があるため、かなり安く手に入れることができました。
今は中古でしか手に入れられないため、相場は供給と需要(=このアンプの人気)次第になりなんとも言えません。 しかし、GrandMeisterという上位機種がいる以上、TubeMeisterは比較的お求めやすくはなるのは変わらないのかなと予想しています。 生産完了してもなおコスパが良いのは面白いです。
余談
ちなみに、私のTubeMeisterはキャビ合わせて5万円くらいで譲ってもらいました。もうずっと前ですけど。 今考えたらあまりにもお得すぎたような…? 当時売ってくれた人、かなり負けてくれていたのでは…
まぁ、当時学生だった私に託していただいたと思って、これからも使っていく予定です。 現に10年以上、私のギターライフを支えていますからねぇ。 スタジオ備え付けのマーシャルやジャズコにマルチをリターン挿ししていた時代を除けば、私のアンプは長い間これ一択でしたので。
操作がシンプル
これは上位機種であるGrandMeisterとの比較にもなります。
TubeMeisterの設定はあちらと比べても非常にわかりやすいです。
フロントのツマミの設定と、SEND/RETURNのオンオフ、あとは後述する電力切り替え設定。 これだけです。
Note
真空管周辺の回路はGrandMeister/TubeMeisterで共通です。 つまりあちらにしかない機能を除けば、同じ設定ならほぼ同じ音になります。
GrandMeisterは確かに上位機種ではあるのですが、音がより良いとか良いパーツを使っているというものではありません。 内蔵エフェクトや、ツマミ設定を覚えさせる機能など、色々な機能が増えている点で違いがあります。
乱暴に表現すると、GrandMeisterはアンプと専用フットスイッチだけで音づくり完結させる、ちょっと極端なアンプです。 エフェクターボードがなくてもエフェクト込みで音作りを完結させるという、リアルアンプではあまり見たことがないコンセプトのアンプです。
それを加味した上で、GrandMeisterとTubeMeisterの「真空管アンプの音作り」としての差異は、BOOST機能、ULTRAチャンネル、PRESENCE・RESONANCEツマミに集約できます。
とはいえ、BOOSTや内蔵エフェクトはボードで賄えます。 むしろ、こだわりの機材をお持ちであれば、結局それを使いますよね。
ULTRAチャンネルはGrandMeister側にしかありませんが、後述する通りLEADチャンネルでも十分ハイゲインなので、利用する機会があるかどうかは人によりそうです。 個人的には使わなそうなので、ULTRAはGrandMeisterの利点としてカウントしていません。
PRESENCE・RESONANCEはシンプルにEQセクションの音作りの幅が広がるので、コレに関してはGrandMeisterの長所といっていいと思います。
しかし、別になくてもいい音は作れます。 必要ならSEND/RETURNにエフェクターを入れれば再現できます。
どちらかというと、これもアンプだけで音作りを完結するために用意されたツマミなんだと思います。
ケトナーらしい音を作るにはPRESENCEとRESONANCEが必要とケトナーが判断しているなら、そもそもTubeMeisterにも搭載されてると思うんですよね。 ケトナーは明確なコンセプトと合理性の元で丁寧に設計するメーカーですし、コストカットで削られたという考えよりも、アンプ単体完結をコンセプトとするGrandMeisterのために、あちらにのみ追加導入されたと考える方が自然です。
まぁ本当のところはわからないですけど、なくても問題ないのは1ユーザとして事実です。
ツマミ設定のメモリー機能は便利そうですが、人を選びそうです。 私は不要です。 何らかの設定を事前に組んで呼び出すなら、ボード側でやります。
メモリー機能は実物のツマミ設定と設定値が一時的に合わなくなる弊害もあるので、不要と感じる人も多いかも。
というか、GrandMeisterのフロントパネルは設定をメモリーして使う前提で設計されているので、過去に設定した値をちょっと調整したいときは意外と困ると思います。その設定を覚えてないといけないので。
TubeMeisterは設定をメモリーできませんが、逆に音質系のツマミが全てフロントパネルに出ているので、 フロントパネルの写真を1枚撮っておけば音作りの全てがわかる(※) のは、TubeMeisterの大きなアドバンテージです。 現場ですぐ調整できますし。 あと、アンプ側の設定を途中で変えるってことはほとんどないと思いますし。
総合的に、TubeMeisterでも十分作り込むことは可能ですし、外部エフェクトボードを持っていれば、不便なことは何もありません。 むしろ、シンプルな分こちらのほうが使いやすいとも感じるかもしれません。
GrandMeisterのフロントパネルは多機能な分、操作が複雑ですからね…
※電力切替設定、SEND/RETURNのON/OFFは裏側ですが、まぁ覚えるほどのものじゃないはずなので…
記事を書く上で改めて差異をまとめてみましたが、TubeMeisterは単なる下位互換では片付けられない魅力があると再認識しました。
それでいて下位グレードなのでお求めやすい。 でも音は上位GrandMeisterと同じ。コスパ良すぎです。
余談ですが、私がGrandMeisterではなくTubeMeisterを所有した理由はもちろん当時そんなにおカネがなかったからです。 学生でしたし、バイト代をためるといっても限界がありましたし。 少なくとも、TubeMeisterの機能で自分にとって十分だと考えてあえて選定したわけじゃないです。
でも、シンプルゆえの使い勝手の良さも含めて、買って良かったと思います。 所有して数年経つ今でも手や耳に馴染んでいるのは、真空管アンプの本質的な部分をシンプルな操作系でたくさん試行錯誤できたからだと思います。
電力切り替え機能がある
背面のスイッチで40W, 20W, 5W, 1W, 0Wが選べます。

バックパネル。右側の4つのボタンが電力切り替えボタン。
まず40Wはこのアンプのデフォルトです。 4つのボタンが何も光っていない場合は40Wになります。 外部ダミーロードやリアクティブロードを使う場合も、基本的に40Wでいいと思います。
20Wはあまり使いませんが、ステージの大きさの兼ね合いで決める…というよりも、パワー管を4本から2本に減らした場合の音のほうが良いと判断した場合にあえて利用しています。
1Wモード, 5Wモードは家庭でキャビネットで音を出す用途で使えます。 1Wでもけっこう音は大きいので、ボリューム設定には気を使います。
特筆すべきは0Wです。 ダミーロードやスピーカーを持っていなくても、0Wを使えばアンプを壊すことなく無音でライン録音ができます。
しかもPOWER ONの時にスピーカーケーブルが挿さっていない場合、自動的に0Wになる安全設計。 スピーカーケーブルが挿さっていない場合はボタンを押しても1W以上を設定できないようになっているのもナイス。
Caution
さすがに1Wモード以上のまま途中でスピーカーケーブルを抜くのは…やったこと無いけど多分壊れます。
Note
ちなみに、ライン出力をDAWに取り込みたいなら、0Wモードのspeaker outではなく、後述する Red Box でキャビシミュをOFFにして使う方が良いです。
Red Boxがある
若干音に関わるけど、あくまで機能面ということで。
Red Boxという、ダミーロード兼ラインアウトの端子が付いています。
簡単に言うとキャビシミュ機能付きのライン出力です。
しかし正直なところ、Red Boxのキャビシミュのクオリティは2026年現在では旧世代感が否めない印象はあります。
とはいえ、キャビシミュをOFFにすればダミーロードからライン出力を録るのと同じですので、現代でもこの端子は有用です。 後でDAWやエフェクターでIRをかければ、ライン録音のクオリティは現代でもフラッグシップ級になります。
Note
ちなみにリアクティブロードではありません。固定抵抗タイプです。 それでも、別途ダミーロードを買わなくても最低限録音ができるのは大きなメリットだと思います。
至れり尽くせりというわけではないけど、あれば助かることもある、という感じです。

さっきの写真の再掲。XLR端子がRed Box。キャビシミュOFF設定があるのが嬉しい
ちなみに私の活動ですとアイマスの オーバーマスター のカバー動画を投稿した時は、リードギター側はこのアンプを0Wモードで使い、
Red Box(キャビシミュなし) → DAW → IR
で音を作っていました。 別途IRを用意する必要はありますが、アンプとケーブル、IRだけで十分いい感じの音が作れます。
コレ録った当時はダミーロードの類を一切持っていなかったので、アンプヘッド+IRだけでライン録音が完結するこのアンプは非常にありがたかったです。
余談: TubeMeister 36との違い
ちなみにDeluxeではない TubeMeister 36 というアンプもあります。
TubeMeister 36だと
- 最大パワーが4W低い
- 音量はほぼ変わらないけど、ヘッドルームの余裕の違いで少し違う音に感じるかもしれません。
- EL84が低出力なことを考えると、たった4Wとはいえ意外と無視できない差があるかもしれません。
- ただ、実際に比較したことがないので、スペック上の予想です。
- Red Boxが古い
- キャビシミュをOFFにできないのが辛いところ。
- リバーブが搭載されている
- こちらはDeluxe 40には無いので、36のメリットになります。
- アンプ直でパッと弾きたい時はリバーブがあると嬉しいこともありますね。
- トーン回路が違う
- Deluxe 40はTriAmp Mark3の回路を参考に作り直されているようです。
- "Deluxe"の名称はここからきている模様。
後述しますが私はDeluxe 40をモダン寄りサウンドだと思って使っていますが、36の方はもしかしたらややクラシック寄りかもしれません。
音について
その前に…「音が良い」とは
まず、文脈もなく音が良いという表現をすることはなるべく避けたいと思ってます。 どんな音が良いか、という判断基準は、やりたいジャンル、カバーしたい曲、なんなら人それぞれで、一概にこうと断定できないからです。
しかも私自身もジャンルを選ばず幅広くやるスタイルですので、私が主観で「音が良い」と言っても、それが「特定のジャンルで良い音だ」とも解釈できないという問題もありまして…。
ということで、この記事では私の個人的な「好きな音」もなるべく言語化しつつお伝えしながら、特に機材を使いこなした際に出せる音のポテンシャルに深堀りしていきます。
この記事が求める「機材の音の良さ」
何より、この機材はどのような音が出せる(出せない)か、調整にどのようなクセがあるか、どんなジャンルをやる場合、何が嬉しく、何が課題になりそうかなど、機材を使いこなせた際に、音のデザインがどこまでできるかを重要視したいと思っています。
その上で、筆者だったらこの機材はこう使う、というアイデアと、そのときはどのようなことに気をつける、といったことをご紹介できればと思います。
Note
検証系の方がやっているように周波数帯域がどう、つまみを回すとどこの帯域が何dB変化…という信号処理的な検証は行いません。 (データが必要と感じたら今後出すこともあるかもしれませんが、優先度は低いと思います。)
総合的な評価
後で細かいことは述べますが、上記の前提も踏まえ、私が総合的にこのアンプの使い時を改めて言語化してみました。
筆者(まくん)流 このアンプの使い時
モダンサウンド全般。 透き通るほどのクリーンから、ドロップDの重厚なリフまで。 とはいえ、いくつかエフェクターを入れて歪み前後の音質を調整したい。
オールドスクール系のサウンドはCRUNCHチャンネルで対応できるものの、それでもこのアンプの主役は扱いやすくモダンなハイゲインと、究極のクリーントーンにあると思う。
キャビネットはV30がおすすめ
個人的には、このアンプのキャラクターをフルに活かすならキャビネットはCelestion V30が載っているものをおすすめします。
それこそ、アンプと対となる TM112, TM212 との相性は非常に良好です。 私はTM112と組み合わせています。 ミニスタック万歳!
他メーカーだとMESAのキャビは相性が良さそうです。(実機は未検証。IRは相性良好です。)
もちろんGreenbackや1960A(G12-T75)など、どのキャビ・スピーカーでもそれなりの音は出せますが、持ち味を活かすならモダン寄りなキャビが良いと思います。 個人的にはV30を当てるのが好みです。
これ以降の音の話も、V30が載っているキャビを前提にお話します。
音作りの幅
まず、このアンプは3チャンネルあります。 (CLEAN, CRUNCH, LEAD)
それぞれのチャンネルに対する私の印象は以下のとおりです。
CLEANチャンネル
このアンプの主力その1。 コーラスをかけなくても「澄んでいる」と言いたくなるほどよく整音されている。 レスポンスは速め。 ガラストーンと言われるが、それも納得のトーン。
ただ、ガラスのように無機質で温かみが一切ないかと言われると違う。 弾いている時の印象は間違いなく真空管アンプのクリーントーン。ギター側のボリュームやピッキングの強さに対して、コンプレッションが追従する感覚がしっかりある。
100W級アンプのヘッドルームに物を言わせたクリーントーンとも違い、かつFenderの20W級のアンプとも違う。 非常に澄んだトーンでありながら、真空管らしい飽和感も十分コントロールできる。 総じてこのCLEANチャンネルは完成している。
Fender系クリーンに近いと言われることがあるようだが、個人的には弾いている時の感覚はけっこう違う印象がある。 とはいえ、強いて言えば100W級のクリーンよりもFenderに使い勝手の傾向は近いとは思う。
筆者的には、モダン・テクニカル系、メタル系のクリーンなアルペジオは他のアンプを差し置いて、これでやりたいなと思う馬面が多いです。 演奏に対する絶妙な飽和の追従感や、そもそもの音の完成度もあって、第一候補に選定したい場面が多い印象です。
コーラスとやたら相性が良いと思っており、薄めにコーラスをかけっぱなしにすることも多々。空間系のおかげでなおさらガラストーンに感じます。
クリーン〜微クランチ程度で、ブルース的なニュアンス重視のソロもいけるのが面白いところ。レスポンスが速いのでジャズなどもいけるかも。 めちゃくちゃ粘っこいわけではないので、そういうのが欲しい場合は他のアンプが適任ですが、このアンプでも十分対応できます。
主力としても、歪みメインの「一部パートだけクリーン」でも十二分に活躍できる贅沢なチャンネルです。 真空管アンプのクリーントーンでやりたいことが全てできます。
CRUNCHチャンネル
まず、普通によく歪む。ゲイン9時くらいでもけっこう歪む。 まぁ、さすがにLEADに比べれば歪みは少ない。 歪みを上げた時の音はLEADとは全く違う。 低出力なギターやシングルコイルPUに対しては、LEADと比べてジャキっとしたニュアンスがよく残る。
CLEAN同様、意外と無機質な印象はない。 それなりに真空管アンプらしい、いわゆる「温かみ」、ボリュームやピッキングに対するトーンの変化を感じられる。
TubeMeisterではLEADとEQ設定が共有されるので、EQをLEAD側に合わせる場合、こちら側は少し割を食う可能性がある。どちらも使う場合は注意。
歪の量をギター側のVOLUMEやピッキングでコントロールするような感情豊かにクランチでソロを弾くときは、このアンプではこのチャンネルが最適。 CLEANは「クリーンに対して歪む」のに対して、CRUNCHは「歪みに対してボリュームを落としてクリーンにする」というアプローチ。
CRUNCHがあることで、このアンプがより「万能」になっている。 もしなかったら「モダン特化」で、「万能」ではなかったかもしれない。 LEAD, CLEANにない領域を埋めてくれるCRUNCHの存在がありがたい。
発展的なアイデアだが、このチャンネルはあえて20Wモードを採用する価値があるかもしれない。 ゲイン次第だがパワー管の飽和が味になりやすいため、変えてみる価値がある。
素直なサウンドゆえ、ブースターなどのエフェクターで味付けしやすいと思う。 エフェクター次第で色々化けそうだが、別の機材ゲーに行き着きそうな気がする。
筆者的は、このアンプを使うステージでクランチサウンドが必要な時に使います。
一方で、自作曲のレコーディングなどで、クランチ用途にこのアンプのCRUNCHを第一候補で選定するか…というと、悩みます。 マーシャルなどが大きな対抗馬で、あちらに流れることが多いです。
悪い音ではありませんが、第一候補で選定するというより、このアンプを使うという制約の中でクランチを作り込む場合、十分良いお供になってくれるチャンネルという印象です。 ※あくまで個人的な機材の使い分けです。
LEADチャンネル
このアンプの主力その2。とにかくよく歪む。GAINは9時くらいでも十分な歪みが得られる。 12時以降は歪み過ぎ。
一言で言えばモダン系ハイゲインの優等生。 MESA, Soldanoのような、そのメーカーを感じる強烈な一個性はない。 モダン系の文脈だと天下のマーシャルさえ「若干クセがある方」だが、ケトナーはそれでも「あまりクセがない」と感じる。
悪く言えばあまり個性がないが、逆に言うと扱いやすく音作りの幅が広い。 INPUT前やSEND/RETURNのエフェクトチェインでキャラクターを大きく調整出来る点が良い。
音作りもある程度何でも行けるが、モダンサウンドを目指す方がバッチリハマりやすい。
筆者はモダン系のハイゲインはまずこれを使います。 長らく使ってきたアンプであり、これが私の中でハイゲインのベースラインになっています。 ですので、まずはこのアンプで何とかできないかを模索するところから音作りをスタートします。 もちろん、私のオリジナルの作品での使用頻度も高いです。
一方で、MESA, Soldano, EVHみたいな強烈な個性がある音を使わなければならないと分かっている場合は、それらのアンプそのものやモデリングを使ってます。そのほうが近道になるので。
そして、これらの3チャンネルが1つのアンプに搭載されている点も大きなポイント。
チャンネルごとに守備範囲がかなり変わるため、1台のアンプで非常に幅広い音を作ることができます。 実際のスタジオワーク、ライブなどでも非常に有用なポイントです。 とりあえずコレ持っていけばなんとかなります。
モダンハイゲインはCLEANとLEADを切り替えるだけでも十分こなせます。 一方で、ローゲインな曲、オールドスクールなサウンドの曲がセトリに入っているときはCRUNCHで対応できるので、隙がほとんどありません。
Note
上位機種の GrandMeister Deluxe 40 ではさらに ULTRA という激歪のチャンネルがあります。 個人的には、(TubeMeisterでは)LEADで十分歪みは足りているので、あっても使わない気はします… 試したことはないですが、ULTRAはジャンルや人を選びそうです。
EQ設定のクセ
アンプ側のツマミはチャンネルごとに GAIN, BASS, MID, TREBLE, MASTER の5つです。
うちLEAD, CRUNCHはEQ設定を共有します。
筆者流 EQセクションの設定
個人的には、12時を基準に下げる方向で調整しています。 12時より上げることは基本ありません。
GAIN, MASTERはゲイン量とボリュームなので特に言うことはありません。 とにかく音作りに大きく関わるのはEQセクションです。
まず、このEQはパッシブ回路です。 EQセクションは昔ながらの(?)設計で、ある音域を調整すると他の音域も影響を受けます。
実際、マニュアルにもそう書いてありました。
これはクラシックなパッシブイコライザーです。そのため、各音域を調整すると他の音域が影響を受けます。例えば「Mid」を上げると、「Mid」をカットした場合と比べて「Bass」が弱まります。
さて、このEQセクションなんですが、実際に回してみると結構クセの強さを感じます。
12時を基準に、上げていくと帯域が極端に強調されます。 一方で、下げる方向だと割と素直に効きます。
その上で、ケトナーサウンド、というか 公式が基準とするのはオール5(オール12時) だと思います。
ちなみにオール10は結構キツいサウンドになります。
個性が強くないゆえの汎用性の高さ
個人的にはケトナーサウンドは、良く言えば優等生、あえて悪く(?)言うなら、それほど強い個性はありません。
というかMESA、Soldano、EVHみたいな多くのハイゲインアンプのクセが強すぎるのが原因なんですが…。 あれらの独自のキャラクターを持ったアンプと並べると、相対的にクセがない優等生という立ち位置は揺るがないかと。
一方でMarshallと比べると、あちらともまた違うというか、むしろ味付けが少ない印象さえ感じます。 Marshallはギターアンプ界の定番中の定番ですが、音のキャラ付けだけで言えば割と明確にキャラを付けてくる方ではあります。
ちなみに、一般的にはケトナーの歪みはハイファイ、タイトで解像度が高い、という評価をされてるそうです。 まぁそう言われればそんな気はします。
それを踏まえた上で、このアンプのEQは12時より下で使う限り、どう設定してもクセがなく扱いやすいです。
個性が強くないゆえの汎用性の高さがイイ
アンプ側が強烈なキャラクターを押し付けてこない分、こちらでキャラ付けの余地がかなり残されていると感じます。
エフェクター次第で何にでもなれる、そんな懐の深さがあるのがこのアンプ、ないしケトナーアンプの長所だと思います。
優等生だからこそ音作りの幅が広い
クセが少ない分、エフェクターを使った音作りによるキャラ付けの余地が広いです。
個人的には SEND/RETURNにEQを足して、音の傾向をガラッと変える のをよくやります。 MESAのMarkシリーズを参考にした手法です。
まくん流 MESA Markシリーズの再現
Send/ReturnにEQを挿し、Vの字のグライコ設定を作ってドンシャリに仕立てます。
一気にMESAっぽいサウンドに近づくほか、他にも色々いじるとかなり強烈にキャラクターを変えることができるので、あれこれ試すのもおすすめです。 アンプ側のEQよりも変化が過激です。
センドリターンがあれば他のアンプでもできますが、優等生サウンドのケトナーとは特に相性が良いです。
中域に特徴のあるEL84を積んでいることを考慮しても、多少ドンシャリに設定しておくと使いやすい場面は多いかと思います。
一緒に使いたいエフェクター
すでに説明した通り守備範囲が広い優等生サウンドではありますが、かけっぱなしのエフェクターをいくつか導入することで、さらに守備範囲を広げたり、意図的なキャラ付けを行うことができます。 筆者は以下のエフェクターをかけっぱなしで運用することが多いです。
アンプ前
- 低域を削れるブースターをかけっぱなしにして、プリに入る前に低域を削っておきます。これもMESAのMarkシリーズと似たアプローチです。ブリッジミュートでモコモコするのをだいぶ防げます。
アンプ後
-
先述の通り、グライコのEQを1つ。私はMXR 108Sか、マルチエフェクターのEQを使っています。EQはかけっぱなし前提で、アンプの一部だと思って音作りを進めています。アンプ側よりも調整が強く効き、キャラ付けもできます。
-
コーラス、ディレイ、リバーブなどよくある空間系エフェクトもたいてい一緒に入れます。
- GrandMeisterと違って内蔵のエフェクトが無いので、空間系はセンドリターン任せになります。
- 特にコーラスはCLEAN、LEADともに相性が良いのでおすすめです。
まとめ
すでに長らく愛用しているアンプですが、記事にするために改めて調べ直してまとめたことで、このアンプの良さを再認識できた気がします。
下位グレードながら不自由なく、むしろシンプルな操作性もあってとても使いやすい傑作アンプだと思います。 生産完了によりなかなか手に入らなくなってしまいましたが、これからもメンテナンスしつつ使っていきたい一台です。